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アプリを開く概要
サシバは中型の猛禽類で、東アジアから東南アジアにかけて分布する渡り鳥です。特に日本では夏鳥として広く知られ、水田地帯や里山で繁殖し、秋には大規模な集団で南へ渡ります。その渡りの様子は「鷹の渡り」として各地で観察され、多くの鳥ファンを魅了します。比較的小型のタカで、背面は褐色、腹面は白地に褐色の横斑が特徴的です。
サイズと寿命
- 体長
- 40cm - 50cm
- 翼開長
- 100cm - 115cm
- 体重
- オス 310g - 490g, メス 400g - 650g
- 寿命
- 約10年 - 15年 (野生下)
- 食性
- カエル、ヘビ、トカゲ、大型昆虫(セミ、バッタなど)、小型哺乳類、小型鳥類などを捕食します。
身体的特徴
- 羽衣
- 成鳥は頭部から背面が暗褐色で、顔は灰色みを帯びます。目の上には眉斑のような白い筋が見られます。腹面は白く、胸から腹にかけて明瞭な褐色の横斑があります。翼下面は白く、初列風切の基部が白っぽいのが特徴です。尾羽には3-4本の黒い横帯があります。オスとメスで羽根の色に大きな違いはありませんが、メスの方がやや大きいです。
- くちばしの形
- 先端が鋭く湾曲した猛禽類特有のクチバシで、色は黒っぽい灰色です。
- 目の色
- 黄色
- 脚の色
- 黄色
- 識別の特徴
- 頭部と喉の灰色、腹面の横斑、翼を広げた際に羽先が黒く、翼の基部(初列風切の付け根)が白く抜けて見える「窓」が識別点になります。飛翔時は翼角が鋭く、翼の幅が広めに見えます。上面は一様な褐色で、下面は白地に細かい横斑があるので、他のタカ類とは見分けやすいです。
- 幼鳥の外観
- 幼鳥は成鳥と比べて、頭部から背面の褐色がやや淡く、下面の横斑が不明瞭で、縦斑が強い傾向があります。また、目の上に白い眉斑がより明瞭に見えることがあります。風切羽の羽縁が淡色で、鱗状に見えることもあります。
- 季節変化
- 繁殖期と非繁殖期で羽色の大きな変化はありません。
- 雌雄の違い
- 性的二形は小さく、外見上の雌雄差はほとんどありません。メスの方がオスよりもわずかに大きい傾向があります。
識別方法
- 1
飛翔時の翼
翼を広げた際に、初列風切の基部(翼の基部から外側へ数えた一番長い羽の付け根)が白く抜けて見える「窓」が特徴的です。翼は比較的幅が広く、翼角がやや出ます。羽ばたく回数が少なく、上昇気流に乗って滑翔することが多いため、翼の形や模様を確認しやすいです。
- 2
下面の模様
腹面は白く、胸から腹にかけて褐色の細かい横斑が密に入っています。この横斑は他の多くのタカ類とは異なる特徴です。喉は白色で、中央に黒い縦線が見られることがあります。
- 3
頭部の色
頭部と喉が灰色(成鳥)であることも重要な識別点です。目の上には白い眉斑が見られます。
- 4
体型とサイズ
中型のタカで、ノスリやオオタカよりも一回り小さく、ハイタカよりは大きいです。比較的胴が短く、尾羽も中程度の長さです。
- 5
鳴き声
「ピッィー、ピッィー」という単調で澄んだ鳴き声は、特に繁殖期によく聞かれ、識別の一助となります。
生息地と分布
- バイオーム
- 温帯林、亜熱帯林、熱帯林
- 分布範囲
- 東アジアから東南アジア(日本、朝鮮半島、中国東北部、ロシア極東で繁殖し、中国南部、インドシナ半島、マレー半島、インドネシア、フィリピン、ニューギニア島などで越冬)。
- 標高範囲
- 海抜0mから約1500m程度
- 好む環境
- 水田、畑、草地といった開けた土地と森林が隣接する里山環境を好みます。繁殖期には針広混交林や広葉樹林に生息し、特に水の近くの林を好みます。越冬地では開けた森林や農耕地、低地の湿地などで見られます。
行動
- 活動時間
- 昼行性
- 採食習性
- 止まり木から地上を見下ろし、獲物を見つけると急降下して捕獲する「待ち伏せ型」の狩りを行います。飛翔しながら獲物を探すこともありますが、基本的には木の上や電線などに止まって獲物を探します。
- 社会行動
- 繁殖期は単独または番いで行動します。渡りの時期には数千羽に及ぶ大規模な群れを形成し、集団で移動します。
- 飛翔パターン
- フワリと軽い羽ばたきで飛ぶことが多く、滑翔と羽ばたきを繰り返します。比較的ゆったりと飛ぶことが多く、渡りの時期には強い上昇気流に乗って高空を旋回し、グライダーのように長距離を移動します。
- 渡り
- 長距離を移動する渡り鳥です。日本では夏鳥として本州以南に飛来し、繁殖します。秋には主に西日本の経路を通り、南西諸島を経由して東南アジア方面へ越冬のために渡ります。春には逆の経路で北上します。渡りは主に日中の上昇気流を利用して行われます。
- 縄張り性
- 繁殖期には強い縄張り意識を持ち、巣の周辺には他の個体が入らないようにします。
鳴き声
- さえずり
- 繁殖期のディスプレイ飛行中などに「ピッィー、ピッィー」という単調で澄んだ声を発します。この声は比較的大きく、遠くまで響きます。
- 鳴き声
- 警戒時には「キィーッ、キィーッ」という甲高い声や、「キュルルル」といった声も出します。渡りの群れの中では様々な鳴き声が交錯することがあります。
- 鳴くタイミング
- 主に繁殖期に鳴き、特に巣の近くやディスプレイ飛行中に活発に鳴きます。渡りの時期には、群れの中で連絡を取り合うために鳴くことがあります。
繁殖
- 繁殖期
- 日本では5月から7月頃。東南アジアの越冬地では繁殖しません。
- 営巣習性
- 主に高木の樹上に小枝を積み重ねて皿状の巣を作ります。同じ巣を数年にわたって使用することもあります。人の手が入りすぎない里山の森林を選びます。
- 一腹卵数
- 通常2~4個
- 卵の特徴
- 卵は淡い青白色で、赤褐色や紫褐色の斑点があります。通常は表面がざらざらとしています。
- 抱卵期間
- 約25日 - 30日
- 巣立ち期間
- 約30日 - 35日
- 親の世話
- 雌雄が協力して抱卵、育雛を行います。孵化後しばらくはメスが雛を温め、オスが獲物を運んできます。雛が成長すると雌雄ともに狩りに出て雛に餌を与えます。
見つかる場所
繁殖地
日本では本州、四国、九州の里山にある広葉樹林や針広混交林で繁殖します。特に水田が広がる平野部に隣接する丘陵地や低山で観察しやすいです。
渡りのルート
秋の渡りの時期(9月下旬から10月上旬)には、愛知県の伊良湖岬、福井県の白山、兵庫県の六甲山、山口県の角島、長崎県の五島列島など、特定の渡り中継地や岬で大規模な群れを観察できます。上昇気流が発達する晴れた日の午前中に、空高くタカ柱を形成して渡っていく様子が見られます。
越冬地
東南アジア(フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイなど)の開けた森林や農耕地、低地の湿地などで越冬します。
フィールドのコツ
- 渡りの時期を狙う. サシバを最も容易に観察できるのは秋の渡りの時期です。9月下旬から10月上旬にかけて、日本の太平洋側や日本海側の海岸沿いの岬や山頂は、タカの渡りの観察地として有名です。上昇気流の発生しやすい晴れた風のない日を選ぶと良いでしょう。
- 繁殖地での聞き分け. 繁殖期(5月〜7月)には、里山で「ピッィー、ピッィー」という特徴的な鳴き声を手がかりに探すことができます。鳴きながら林の上空を旋回することが多いです。
- 止まり木での観察. 開けた水田地帯の近くにある林縁の木の上や電線に止まって、獲物を探していることがあります。双眼鏡で丁寧に探してみてください。
- 望遠鏡と高倍率の双眼鏡. 渡りの観察では高空を飛ぶことが多いため、望遠鏡や高倍率の双眼鏡が必須です。動きの速いタカを追うためには、三脚に固定することが推奨されます。
- 生態系への配慮. 繁殖地では、巣の場所を特定しても、サシバにストレスを与えないよう十分な距離を保ち、静かに観察するように心がけてください。特に巣立ったばかりの雛がいる場合は細心の注意が必要です。
類似種
ノスリ
Buteo japonicus
ノスリはサシバよりも大きく、全体的に褐色みが強く、腹面に独特の「腹帯」のような暗色斑があることが多いです。飛翔時はサシバよりも翼幅が広く、尾羽が短く見えます。サシバの頭部や喉の灰色、腹面の明瞭な横斑はノスリにはありません。
チュウヒ
Circus aeruginosus
チュウヒはサシバよりも細身で、翼が細長くV字型に保持して飛びます。雄は上面が青灰色で、雌は全身が褐色がかります。サシバのような明瞭な腹面の横斑は見られず、顔は通常、目立つ白い顔盤で囲まれます。生息環境もヨシ原や湿地を好みます。
ハチクマ
Pernis ptilorhynchus
ハチクマはサシバよりも大型で、頭部が小さく、首が長く見えます。飛翔時は翼の付け根が細く、翼角がほとんど見えない直線的な翼のラインが特徴です。尾羽の横帯もサシバと異なります(通常2-3本の幅広い帯)。また、ハチクマはスズメバチなどの昆虫を主食とし、その名の通りスズメバチの巣を掘り起こして食べることが知られています。
クイック情報
- 和名:
- サシバ
- 学名:
- Butastur indicus
- 分類:
- タカ目タカ科サシバ属
- 別名:
- 鷹柱(渡り中の群れが上昇気流に乗って旋回する様子)
- 環境省レッドリスト:
- 該当なし(低危険種)
- 食性:
- 肉食(主にカエル、ヘビ、大型昆虫)
- 渡り:
- 夏鳥(日本で繁殖)
- 日本の観察シーズン:
- 繁殖期: 5月-7月, 渡り期: 9月下旬-10月上旬 (秋), 4月下旬-5月上旬 (春)
豆知識
- サシバの「サシ」は、獲物を見つけてまっすぐに「刺すように」急降下することから来ているという説があります。
- 渡りの時期に「タカ柱」と呼ばれる集団を形成し、数千羽ものサシバが同じ場所で旋回しながら上昇気流に乗って一斉に渡っていく光景は圧巻で、多くのバードウォッチャーを魅了します。
- 地方によっては、「秋の田んぼでカエルを食べるタカ」として親しまれ、里山の生態系を測る指標種としても注目されています。
- 繁殖期には、オスがメスに求愛給餌を行う行動が見られます。これはつがいが協力して子育てを行うことの現れです。
学術分類
- 界
- 動物界
- 門
- 脊索動物門
- 綱
- 鳥綱
- 目
- タカ目
- 科
- タカ科
- 属
- サシバ属
- 種
- サシバ
